足/壽瀬 チカ
 
てゆくのだ
  地下鉄から上り
  出口だと思って吹き出された
  それぞれの足は
  やはり最初に
  白いラインを渡ってゆく
  朝

 
  はいている靴はめいめい、意識されないまま
  足は確かに動いて渡ってゆく
  わたくしの手は
  キーボードの上に置かれたまま
ただ入力と変換とクリックをくり返し
足は萎えたように、デスクの下
指先だけが液晶画面を前にキーをたたき
眼を上げると
渡っては霧散する 見知らぬ足達だけが渡ってゆく

  



戻る   Point(2)