さくら/霜天
 
咲く、羅列の空は埋め立てられて
さあ、暮れて望まない夜に
駅前の車列に後ろから急かされて
家路の、振り切る早足を抑えられない
駅から吐き出される、ため息と等しく
順序良くもうひとつ、暮れられる




可能性だよ、としたり顔で
口の端を滑らせるその背後で
昨夜、解けなかった数式が
本から抜け落ちて
無表情で見下ろしている
部屋中に数字を書き込んで
その間、君は夜景を見ている
次第に僕の体は膨らんでいって
境目が、見えなくなっていく


きみはねむりながら
つめをきり
みみをくすぐる
きっと真夜中には傘が足りない


眠るために毛布を抱きしめた
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