アメ横/竜一郎
この横丁を歩いていると
不意に路地から幽霊が顔を出す
幽霊は
「こんにちはいい天気ですね
学校のほうはいかがですか
楽しいですか?」
なきそうな言葉をほろほろこぼす
「ええ結構なものです。
教養主義の再来を望んじゃいませんが
やはり学習は自分でしなくちゃなりません。
一生勉強ですよ」
どうもかみ合わない
おれが幽霊にでもなったようだ
子を失いて自害した
幽霊の涙は胸に詰まる
「そうですか
それじゃお元気で」
しとしと降る都会の雨に打たれながら
おれはゆっくり空を見上げる
がちがち歯が鳴って
雨が口に入るのを抑えられない
幽霊が往ったのは
どう考えたって
おれの住んでいる家だった
(物語になって終わる
それは卑怯と云うものだ)
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