私が考えたくないこと/竜一郎
 
 少しだけ、正直になろう。
考えたくないことが、いくつもある。

 ひとつは、戦争のことだ。
戦争は痛い、苦しい。

 ひとつは、貧困のことだ。
飢餓は苦しい、泣きたくなる。

 ひとつは、報道のことだ。
隠蔽と歪曲は気持ち悪い。

 ひとつは、麻薬のことだ。
忘却するのは悲しい。

 ひとつは、病気のことだ。
ひとの同情は情けない。

 ひとつは、労働のことだ。
奪い合うのはみっともない。

 すべては、不幸のことだ。
今よりはもっとマシな世界がある。
それを求めることができる、はずだ。
でなければ、ひとは何のために子を残すのか。
歴史を背負わせるためか?
不幸を否定し幸福だけを求めさせるためか?
すべて、おれたちの尻拭いをさせるためか?

 いま、不幸を終わらせなければ、
災厄はいつか、だれかに
降り注がれることになる。

 私が考えたくないのは、
考えてくれるほかの誰かを探すからだ。
お手数かけますが、
代わりに考えていただけないでしょうか。
戻る   Point(1)