私が考えたくないこと/竜一郎
少しだけ、正直になろう。
考えたくないことが、いくつもある。
ひとつは、戦争のことだ。
戦争は痛い、苦しい。
ひとつは、貧困のことだ。
飢餓は苦しい、泣きたくなる。
ひとつは、報道のことだ。
隠蔽と歪曲は気持ち悪い。
ひとつは、麻薬のことだ。
忘却するのは悲しい。
ひとつは、病気のことだ。
ひとの同情は情けない。
ひとつは、労働のことだ。
奪い合うのはみっともない。
すべては、不幸のことだ。
今よりはもっとマシな世界がある。
それを求めることができる、はずだ。
でなければ、ひとは何のために子を残すのか。
歴史を背負わせるためか?
不幸を否定し幸福だけを求めさせるためか?
すべて、おれたちの尻拭いをさせるためか?
いま、不幸を終わらせなければ、
災厄はいつか、だれかに
降り注がれることになる。
私が考えたくないのは、
考えてくれるほかの誰かを探すからだ。
お手数かけますが、
代わりに考えていただけないでしょうか。
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