静かに冬を過ごそう/炭本 樹宏
 
 こころを鎮めて
 水面を見つめる
 郊外の空気は澄んでいて
 水面には青空が映っている

 何も考えないなんて無理だ
 時計に支配された世界の住人
 この束縛から逃れたく思う

 やがて
 時は流れて命の炎も落ちつくだろう
 穏やかな日々は僕を迎えてくれるだろう
 なんて
 空想したりする

 潤滑油が切れて
 かかりの悪いエンジンのように
 この頃は頭が悲鳴をあげてやがる
 囚われた者たちの悪臭が
 僕をせめているのだから

 せめて
 妄想に浸り
 天界の様子をうかがい知りたい
  
 なぜだろう
 ここにいると心がなごむ
 冬は暖かい番茶とこたつがあれば
 言うことはない



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