ミヒャエル・ゾーヴァの「スープ皿」に関する言及/竜一郎
ラーフたちを助けに来たイギリスの大人たちは
殺し合いをして生き残ろうとしたラーフたちに
「なぜ私たちのように振る舞わなかったのか」
と問いただそうとする。
そのイギリス人は軍艦に乗った大人たちだった。
撃ち落された戦闘機の乗り手が
この島に降り立つことも描かれている。
日常が蝕まれていながら、
非日常である戦争が健全であろうはずがない。
豚の笑い声は、彼の仲間の豚が、
斧の一振りでまた首を落とされた断末魔の変形なのではないか。
私は暗い不安の中で、豚の頭のことを考えている。
とても、つまらないことなんだよ、それは。
どうか子どもにそんなことを考えさせないでほしいと願う。
だからこそ、ゾーヴァの『スープ皿』に少しでも多く触れてほしい。
暴力を知るのは、そこに暴力があることを見ることだから。
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