欲のありて思ふこと/竜一郎
 
(手段より)
ある法師は戒律が欲しかった
ある学者は定律が欲しかった
ある農夫は鍬と鋤とが欲しかった
ある法螺吹きは真実が欲しかった
ある乞食は一寸の金が欲しかった

欲ありて思うことがある
どこまでゆけば止むのか、と

ある者はこう云った
「それを人は向上心と呼ぶものだ。
 それが尽きたとき、ひとは怠惰に蝕まれるだろう」

ある者はこう考えた
「でも、それは欲に違えねぇ。
綺麗ごと言ったってだめさ。
似非モラリストの誕生だ!」

ある鳥はその二人を見て思った
「あの二人は空を知らない。
 この青さを信じない。
 議論が真理を生むのなら
 今まで千は生
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