セピア・フィルター/久野本 暁
 
生まれた時から蛍光灯は明滅を続け
息吹の動きを受けずに四隅の埃は

存在しない思い

廊下の奥の黒電話


硝子戸を乱雑に引き押ししては
夕暮れの色の中に灰褐色のラッパが響き

遠い遠い景色

山の向こうの後姿


帰りたくない夕方の
清い孤高を書き留めたくて

映る目の色はセピア・フィルター
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