ユニコーン/光冨郁也
 
いる。白い風景が次第に、固いアスファルトと、コンクリートの色彩に変わっていく。手の冷たさに、コートのポケットに片手を入れる。駐輪場の前で、自転車を降りる。いつもの場所に置いて、わたしは駅に向かう。歩いていると、首が寒いので、手を当てると、金色の長い髪が指に巻き付く。わたしは、そっと、髪を風の中に、落とす。

 わたしの前を車が走り去る。
 冷めた街で、わたしは、胸のポケットから定期入れを探す。深い緑の葉がでてくる。わたしは、ゆらりと改札口を抜けた。女の名前を頭の中で繰り返す。あごを、一人さすり、ホームの人混みにまぎれる。乗車位置に立つ。わたしは、斜めに空を仰ぎ、待つ。

 白けた街並が続いている、その裂け目に、ユニコーンのいななきが聞こえる。鳥が/ホームの上で羽根を散らす。その小さな羽がズボンにつく。触れると、ゆっくりと落ちていく。ズボンのポケットのふくらみ、手を入れる。中から白い紙に包まれた、クリスタルのユニコーンをだし、手の平で、陽にかざす。
 白銀の景色、降り注ぐ金色の/
 女の髪の中で目覚めた、その朝に―― 。

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