「地下鉄には、もう一つの夜が」/ベンジャミン
まう
蛍光灯の明かりを頼りに
みな自分が乗るべき列車を待っている
どこかへ運ばれてゆくために
※
いつか見たホームレスはどんな思いで
通り過ぎる列車を
流れ込む人波を
眺めていたのだろうか
誰もが自分とは離れた存在に
気づかないふりをして
目をあわせず足早に乗り込む
もう一度陽の光を浴びようと
運ばれる自分自身を感じることもなく
必死になって
もう一つの夜をゆく
※
また陽の光を浴びようと
星のない夜を見上げながら
漠然と感じる不安を
変わることのない景色に映しながら
もう一つの夜をゆく
車窓に映る
自分自身を見つめながら
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