源泉/霜天
小さな息遣いで狙う
溢れそうな領空を遠い声が駆け抜けていく
高度3メートル
誰も倒せない鉄砲に込めた弾丸は
赤や黄色に自己主張して
空に駆け上がる勢いを
繰り返すたびにどこかへ置き忘れている
小さな息遣いで、狙う
抜け落ちている世界
撃ち落とす蝉の声
夏の色
淡いセロファン越しの景色を
そう呼んでいたころ
繰り返し撃ち抜いた空の先には
みらいと、空想していた誰かがあった
その日のために
生まれていくのかもしれない
その日のために
消えていくのかもしれない
銃口
今も撃ち抜けないものたちが
変わらない色で空にある
高度、測れない潮騒
高いところ、ただ高いところ
息を潜めて狙う、くらいに
単純な地平だったなら
今も
消えていく銃口の撃ち抜いたものたち
倒れるように零れていく、笑うように、笑うように
その日が始まり、だとしたら
もう何も、なくならないのかもしれない
高度3メートル
溢れそうな領空、を
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