早春/銀猫
 
宵闇は
切り子細工の紅茶に透けて
紫紺も琥珀の半ばでとまる
グラスの中では
流氷が時おり
かちり
ひび割れて
薄い檸檬の向こうから
閑かに海を連れてくる


壁の時計は
ゆるり そろりと針を進め
きみの味方についている

贅沢な退屈を楽しむのも束の間に
便りの日付を振り返り
振り返りしては
唇にちいさく風が湧く


春までの
きみの願いはまだ蕾
水遣りが過ぎては
(夢)
かなしくしな垂れ
陽射し恋うるは我れもひとしく

こころ
文色も
月にまかせて

凪まだ知らぬ海






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