コンセント/岡村明子
 
夜中も二時になった
眺めるものがなくなった
冷蔵庫の前に座り込んで
あの音を聞くと
ざわざわする

腰の辺りに
コンセントがないか
確かめる
あるのかもしれない
遠くへ行こうとすると
ちぎれそうで
痛い

台所の床は
いつも
冷たい
そして
何かが
這っている

命を
つなぐものに
集うのは
むしも
わたしも
同じ
食べ物が
機械の箱に入れられて
守られている
死んでいる

コンセントは
這う
ガラガラヘビのように

冷たくなった頬に
いつか
食べ物
だった
かすが
食べ残しのようにくっついて
わたしは食べないけれど
なにかは食べているのだろう

あの音はときどき
中断する
コンセントは
行き場を探し当てたか

戻る   Point(4)