死神と私 −朝の卵−/蒸発王
先刻まで白かった朝の卵の殻は黄色くなり
春一番の風に飛ばされて空に琥珀色の雲を作りました
朱色と黄色の虹彩が
憂いを含んだ瑠璃色の空を焼き尽くし
その焔の光が凍りついていたわずかな星を溶かしていきます
ついに夜空が壊れ
夜の長い腕は落ちてきた大きな夜空を抱きしめ
満足げに地球の裏側へ立ち去って行きます
朝焼けです
死神は孵化したばかりの朝焼けに
冬の間に回収した人魂を投げ込みます
朝焼けに食われた魂は
また次の輪廻の輪に組み込まれるそうです
死神は大きな朝焼けを嬉しそうに眺めていました
私はというとすっかり感動してしまい
春の間朝の卵を
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