きろ、つきはなし/AB(なかほど)
ぼく、
で始まる作文は良くありません
と先生が言ったものだから
ぼく、は
とりあえず僕の事はおいといて
まるで明後日の方から見た事を
喋り出す
ぼく、は
ほんとの僕が見えなくなるまで
そんな事ばっかりやっていたので
世界中の誰よりも
僕の事を知らない人間になってゆく
それなのに
ぼく、は
あいかわらず僕は
先生のお気にいりの作文を
書きたい
三年になったら
太陽を赤く塗ってはいけません
四年になったら
雲を白く塗ってはいけません
じゃあ五年になって描いた手のひらは
なに色?
ぼく、は
ずいぶん前から忘れっぱなしの宿題を
とりにいくつもりで
あの坂道をちょっとだけ上ってみた
小学校の校舎はまだそのままだったけれど
ずいぶんと小さくなっていた
もう
ぼく、にはずいぶんと
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