思い出さない、忘れられない/逢坂桜
 
読まなくなった本をかたづけていたら、

ページの間から、一枚おちてきた。

古い写真に手が止まる。

「・・・」

思い出したことなどなかった。

だが、忘れてもいなかった。

いまの自分の中にも、この時の心が占める場所がある。

苦かったそれは、時間を経て、少しだけ優しいものに変わってゆく。

適当に開いたページに写真を挟み、本棚に戻す。

捨てられるまでには、綺麗な思い出にできなくて。


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