(ペチカの黙秘)/こしごえ
日はこの時ついに陰ることはなく
交叉点の信号が
青ざめて進めという
曲線に添った産声が
白い手で羽ばたき
円周率へ視線をおくり
目をふせた
ふせないで
みつめて
林檎の赤
子が母の乳房にキスをする世界
光がステンド・グラスを祝福した
小さなてのひらが指さす
虹を帯びた太陽を
瞳に映して
クリア・エッセンスを燃やすペチカ
燃やす燃やせペチカ
宙の天秤でうつむくレコード
回旋曲の内で膨らむ
遠心力で分離された
私の影
どこまでも黒く透ける影 ノ
旋律に輪舞する記憶の旋風
日はこの時ついに陰ることはなくて
※ペチカ=暖炉の一種。
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