旧きうたより/木立 悟
 




十三の 私の願い 階段の
最期の一段 豚の背となれ



散る柳 時知る柳 喰む柳
流れにそむき さまよう柳



葉の蟻や
揺れて鈴蘭 死化粧
吐闇の風に 粉飛ばすかな



金色(こんじき)の
毛先の宇宙 三ッ首の
瞳に沈む この星の我



知らぬ間に 透けり染まりし
障子の命
知らぬ間に破れ 日々隠される



嬰児(みどりご)の  
生まれし夜のその果てで
全てたれ流し絞め殺さるる天使



濡れ浮き世 全ての踊り子 
くちおし夜(や)
たちまちひとりに ひかり散らして



やわらかき
手のなかのふたつ 死にかけて
魂なのか命なのか



つぎはぎの世の境いめを迷う我
赤子の伸ばす手にさえかなわず










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