グラウンド/和泉 輪
 
人がいないと
グラウンドは淋しそうだ
ただ広さを主張するばかりで
しかしその声は誰にも届かない


私が足を踏み入れると
グラウンドの広さが私を取り囲む
全てが遠ざかっていくので
私は自分を近くに感じる


グラウンドの土には
誰かの足跡が残っていた
まだ憶えているのだろうか
ここに在った人の重さを


遠くで蝉が鳴いている
私は大声を出す
グラウンドが淋しくないように
私は私を置いていく
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