おけら街道/田代深子
け前を貰おうとしている。それが悪いか、金を出すのは俺たちだ、俺たち
が俺たちの真摯さに見あう褒美を貰うのが、なんで惨めなことなんだ、と期待
は呻るが目は掲示板をちらちらとしか見ることができない。そんな惨めな期待
を育てたのは俺だった。
明滅は、いつまで続くわけじゃない、こんなことは長くは続かない。おっかさ
んが鰺を三枚におろして腹わたと一緒に期待を捨てちまったように、空っぽの
目ん玉になって掲示板を見てみろ。最後の期待の細い声は、ぴたりと止まった
数字が引っこ抜いてしまうだろう。俺はおっかさんの息子にもどる。日曜の夕
刻、両手を空にかざしたら尻ポケットにつっこんで、歩いて帰る。
2006.2.5
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