おけら街道/田代深子
 


叶いっこないと言いきかされて育った期待が破れんばかりの心臓をおさえつけ
明滅する。おまえなんかいないほうがいいのだと言い聞かせて育てた期待が、
かじりつこうとしている一〇〇〇円ばかりの分け前。額は肝心じゃない、俺の
身代だとフェンスの前で震え待っている。もはや無いも同然の着差に順をつけ
る掲示板、あんなもんは如何様だ予定調和だとなじりながらおびえ、誰もアテ
にはならない誰にも助けは求めないとつぶやきながら肩で息している。

おっかさん、おっかさんは芽生えてくる期待を摘んでは捨てていた。親父が新
聞片手に俺を引っぱって日曜の朝から握り飯と小瓶に焼酎仕込み勇んで行くの
を送る
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