無い/渡邉建志
 
れた赤い蝶々。表面だけの、無いの静かな微笑み。私(有る)はあなたを犯したかった。あなたの蝶を解放したかった。時計。目。有る。無い。手。あなたの長い腕。無い。有る。あなたは目であった。あなたは謎であった。そしてあなたは花であった。あなたのなにもつけない匂いこそが花であった(何という奇跡!)。あなたは静かな水面だった。あなたはその下に休火山を持っていることにうすうす気付いていた。あなたはわたしがそれを爆発させることを拒んだ。あなたが望むとき一瞬だけ輝く閃光、あなた自身が追いつけないと語った、赤い蝶々たち。あなたは追いつける。だけど静かに微笑んでいる。情熱を閉じて微笑んでいる。私は知っていた。私が無いで
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