ふるさとの声/いわぼっけ
友よ
四十三年生きてきたことを
誰に誇れと君は告げてくれたのだ
郷愁の募る日には
ふるさとの山並に似た雲が現れて
街々のとよめきは
懐かしの潮騒に転じていくようだ
あれから
十年… … 二十年… …経って
三十年目も過ぎた
お前はどこに行っちまった
濃霧に包まれた原野に立ってみろ
知人(しりと)岬の霧笛が聞こえるか
イワボッケ山の鳥の糞みてえな
山葡萄の味を忘れたか
乾いたベコの糞の切れ端にしたって
お前の帰りを待っているんだ
頭のてっぺんが赤い鳥いたな
うんとこ首っこ伸ばして縮まねえ
クワルルルー クワルルルーって
鳴いているのが聞こえるべ
早くお前に食わしてやりてえ
マリモの佃煮こさえてよ
コクワの酒酌んで
勝利の美酒とは言えねえが
お前の顔見ての一杯が待ちきれん
腹減ったらよ
ホッチャレ鮭でまんまを食うベ
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