街の物語/アンテ
 
                                 (喪失の物語)


とにかく踏んだり蹴ったりの一日だった
街のすべてが彼女を潰そうとし
行動を否定し足元をすくい莫迦にし裏切った
金輪際こんな街で暮らしていたくなかった
早足で歩くうち
彼女は違和感を覚えて周囲を見渡した
歩き慣れた通りのはずなのに
いつもの家並みや商店街が見あたらず
ふと足もとを見ると
宝石箱くらいの小さな建物がならんでいた
けれど作り物ではない証拠に
住人たちも小さくなっていて
彼女に踏みつぶされまいと右往左往していた
地形を頼りに帰り着くと
彼女の家も例外ではなく
玄関を指で
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