雪夜のステップ/銀猫
季節外れのマリーナの隅に
ON AIRのオレンジのサイン
夜はそこにだけピンライトを当てる
思いのほか雪は強くなり
ラジオ局で流す古いジャズが
熱く火照って静かを乱す
厚い硝子を一枚を隔て
それはマイクに向けた口元を
無声映画のシーンに見せた
明るく努めるパーソナリティーの横では
片耳にヘッドフォンを当てながら
ニットのキャップが音拾いに勤しむ
スウィング
スウィング
マフラーも短く揺れて
サミーデイビスジュニア
ジョニージェイムス
空気は何処となくウィスキーの匂い
真夜中に詰め込んだ低い雲のうえで
ほろ酔いのベテルギウスが
神話を赤く語る
スウィング
スウィング
一夜限りの
緩やかなステップだから
靴音は密やかに
まだ
雪
闇に
雪
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