大手拓次のために/渡邉建志
 
こえ、のほうだ。やさしいうた、のほうだ。底に降りていく人は底の人よりも少しだけ余裕がある。たしかに少しだけ余裕はある、けれども、悲しみに寄り添えるのは悲しみだけだ。底の人たちは光の入らない半地下の部屋の壁にへばりついてうつむいている。短い声しか聞くことができない。短い歌をやさしい歌をやさしい歌を短い歌をわたしにわたしにわたしにわたしにください私はそれを何度も書くだろう私はそれを何度も読むだろう私はそれを何度も歌うだろううたようたようたようたびとよ、あなたの死はわたしには生でありあなたの生きた過去はわたしには現在であり、そう、そういった人を詩人という名で呼べ。
  
 
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  創造の
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