キリシタス/馬野ミキ
 
キリストはキリスト教を作ったりしなかった
彼はただの愛に溢れた大工であった
キリストはよく遅刻したし、仕事にこない日もあった
彼はそんな風に頻繁に約束を破ったが
生まれたての子どもが誰彼と隔てることなく微笑むように
いつも陽気で愛嬌のある男だったので、
親方は彼の笑顔を見ると自分が何について怒っているのかということを忘れた
キリストは女に関するトラブルを度々起こしひんしゅくを買ったが
どの女たちよりも深く傷ついた
彼は体毛が非常に薄く髭を伸ばしたことなど一度もなかったが
すべての彼についての絵画や彫刻には、後世の者たちの
彼に威厳を持たせようというコンセプトにより勝手につけ加
[次のページ]
戻る   Point(13)