月に狂う/角田寿星
 

 1

月に憑かれたピエロが
ぼくにずっとささやきかけていた
ぼくは我にかえった どうして
こんな遠くまで来てしまったのだろう


 2

満月に
子供のオバケがひとり
さめざめと泣いている
ススキもガマの穂も蛙もゆれる影も夜のやさしさも


 3

月の光が電気泳動され
堪えきれずにこぼれ落ちた雫が
湖に
並木道に
人々の眠れる野獣に
拡散する

暴力的な時代が
はじまっていたのだ ずっと前から


 4

Gマイナー、Cメジャー、
Aマイナー、Tメジャー。
あらかじめ配置され照らされることばたち、
葉擦れの百蛾がふわっと舞
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