Pied Piper/大覚アキラ
綿飴のような雪が降る
真昼間の御堂筋を
デモ行進の労働者たちに紛れて歩く
肩に 髪に
降り積もる雪が
おれたちの影までも
白く塗り潰してゆく
そういえば
子どものころ
登山家か
船乗りになりたかったんだ おれ
世界中の山のてっぺんに
足跡をつけるか
さもなくば
世界中の海のど真ん中で
小便を垂れるか
馬鹿げてる
あまりにも馬鹿げた夢だ
登山家や船乗りじゃなく
どうせならいっそ
山賊か海賊なら
夢も叶っていたかもしれないな
アスファルトに
うっすらと積もり始めた雪
そこに
おれたちの磨り減った靴底が
みっともない足跡をつける
この行進の目的地が
いったいどこなのか
誰も知りはしない
なぜだか
もう
二度と帰れないところへ
向かっているような
そんな気がしたのは
きっと
気のせいだろう
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