彼は逢えただろうか。/クローバー
 
彼は、空の絵を描いていた
空気の色を、探していた
捕まえようと、筆を振り回したりしながら
まだ、筆先は、毛の色のままだった

彼は、いつまでも、空の絵を描いていた
失った恋人が、空にいると
信じていた
画用紙は、空っぽのままだった

彼女の色は、何色だったのか
思い出せないでいることをすごく恥じていた
彼女の空気が
愛しかったことは覚えていた

彼は、ときどき、ほんとに、ときどき
空を見ながら、笑う
近所では、もう有名人である
彼が、空の絵を描き始めて、もうそろそろ、4年になる
彼の居場所は、公園のベンチと決まっていた
その姿を、ある人は、哀れんだ
そして
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