近代詩再読 草野心平/岡部淳太郎
 
てもまにあわない。
そんなときには。霙にぬれて。
夜中の三時のデンシンバシラだ。

(「デンシンバシラのうた」全行)}

 淋しい人を慰めるような口調でありながら、そこには詩人が長年培ってきたユーモアのセンスが息づいている。お節介に他人を元気づけようとする者が多い中で、こんな詩になら慰められても良いと思えるし、夜中の三時にデンシンバシラとしゃべっても良いかもしれないとも思えてくる。
 草野心平の詩には、生活者としての土着的な強さがあると思う。蛙や自然を謳い、一見夢想の世界に遊んでいるようにも見えるが、その実しっかりと生活に根を下ろしていて、だからこそつくりごとではないリアルな詩情が詩
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