酔いどれおるふぇ/アシタバ
すれちがいざま斬りつける嬌声に
手負いと成り果て影を垂らす
愉悦のうす皮の散り敷く裏通りのあたり
あんばい良く酒場の明かり
絶命の呈で
傾(なだ)れ入ると棺桶よりは少し広い
早速ねんごろになった男は
敗者の笑みで笑っていたが
身なり良く体格も立派で
杯を重ねるにつれ
太った財布に酷似した
それなら支払いは任せたと
逃げ足に腰を浮かせた途端
襟首をつかんだ男の顔に笑みはなかった
白み返った空を書割りに
死出の門出の思い入れ
黒鳥がだみた声で送っている
回り舞台
円タクのシートでは見得を切る間もなく死に芝居
拍子木の音と聞いたのは目覚ましの音
我が家の寝床に早変わり
白無垢めいた寝巻に着替えているのが
われながらいぶかしい
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