青い切符/佐々宝砂
その切符には
行き先表示もナンバリングも日付もない
藁屑を頭に被った駅員が
改札を通れとうながす
自動改札に切符をさしいれると
青い切符はもう切符ではなかった
昇降機は下降を続ける
私は地上にいたはずなのに
どうしてさらに落ちてゆくの?
世界はどうしてこんなに揺れるの?
みんなはどうして見上げているの?
ポジティヴ過ぎる歌声で
綱が歌っていたりして
青い壁はなおも私を圧迫する
しかし私は事態を楽しみつつある
思い出してごらん
駅員は微笑んでいたのだよ
狂気の藁が
私の足首からツと顔を出す
なんとさわやかに
2001/07/26
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