私はお葬式は嫌いです/蒼木りん
 
開かなくなった国語辞典に
埃が積もる
もう勉強しないから
鉛筆削りの音だけがなんとなく快感

学校の先生は
いまだ粉だらけ
黒板もチョークもべつに要らないのに
それが似合うのは木造校舎だと思う

手間も暇もかけなくていいなら
あとは何が残るだろう
奇跡は物語の中のこと
人間も轢かれたイモリも内臓の色も同じ

私の母子手帳は
どこにいったんでしょう
まさか燃してしまったんですか
私はお葬式は嫌いです

駅ビルのレストラン
やって来る新幹線や電車を見ながら
陽炎が永遠みたいで
メールする相手もなくて

そのあとゲームコーナーで
百円何枚も使って
あともうちょっとの魔法
昼寝の時間は確保しないと

いつまでも
子どもだったらいいのにな
カレーライスの匂いに
家出の決意も棚上げするみたいな

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