ある帰郷(マリーノ超特急)/角田寿星
おち
首に縄をかけられ曵きずられていった
あたしは
燃えさかる村の暗がりで
連行された居住区の収容所で
ありとあらゆるものをぶち込まれた
泥棒をしなくても生きていける方法だって?
小さな村の滅亡は小さなニュースになって
教会が規制の対象にされたのだとか
盗品の一部が管理局の逆鱗に触れたのだとか
さまざまな噂がながれ飛んだ
サリのまぼろしが
きびしい目付きでうつむいたままつぶやく
ぼくたちは 要らない人間だったんだ
ただ それだけのことだったんだ
じゃあ要る人間て いったいどんな人間さ?
見つめるサリの瞳があたしの瞳のように
消えそうなくらいにおおきく潤んで
あたしの声が いちめんの砂地に転がる
骨のオブジェたちをかたかたと揺らした
焼き払われた故郷の村にひとり還ってきた
そこかしこに広がる
あたしたちの文明の焼け跡
崩壊した建物には重たい鉄扉だけが残って
あたしは一本のヘアピンで
鍵をかるがるとこじ開け
鉄扉のむこうに
入っていった
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