民謡/
 
行きつけのラーメン屋兼居酒屋、久留米の親父さんは
酒が回ってくると
いかつい顔を、ほころばせながら
五木の子守唄を歌う癖がある
いつもの寂れた店内の
やたらと綺麗な朱色のカウンターの上に
つ、ついっと並べられる 小皿の中身
どれもこれも
素材を活かす為の、薄い味付け
しんなり茹で上がっている山菜たちは
親父さんの歌声が染み込むことで
極上の、肴になる
野太い子守唄だけれども
すうすうと
小皿の上、小さな寝息を立てている


たまには他のも歌ってよ、と
会津磐梯山やら
炭鉱節やら
酒が回れば回るほど
親父さんのレパートリーは数を増す

決まって最後には
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