見慣れぬ生き物/アシタバ
尖った爪の先で
地面を掻く
見慣れぬ生き物の
陰鬱な唸り声
影が揺れる
長い執拗な行為の持続
無数の線が刻み付けられ
あるいは
何かの想念を
かたどるものであるかのごとく
しかしまた一条
線が引かれるごとに
描かれつつあるかに見えた何かは遠のき
別の何かが立ち現れようとする
だが再び引かれた線は
今まさに取り逃がしたものの
飛び去りゆく軌道をなぞる
小さな断絶でしかない
すでにして
数知れぬ描かれなかった形で
見慣れぬ生き物の周囲は満たされた
そして彼の目前には
なまなましい痕跡から
無が香っていた
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