【 僕と浮浪者 】/豊嶋祐匠
 
僕の車を
追い抜いて行った




「可愛そうに」


そんな言葉を
哀れみの心に
呟きながら

放浪者の
横を素通りして

スピードを上げていった




次の赤信号で
車を止めると

あの放浪者が
また

僕の車を
追い抜いて
行こうとしている

とぼとぼと

とぼとぼと

変わらぬ
憂いだ様子で

僕の車を
追い抜いて行った




彼がなぜ

あんなに
見窄らしくなって
しまったのかは


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