面影橋/落合朱美
だことは ある
騙すつもりはなかった(いつだって私は)
けれど 嘘をついた
それらが罪だというのなら
善良な私ならば償わなければなるまい
けれどその術を知らぬまま
新たな罪を日々重ねて生きている
面影橋から川面を覗く
歪んだ顔はたしかに罪人の顔だ
悔しいからそのままじっと見つめてやる
犬の散歩の初老の男が
怪訝な顔で通り過ぎる
ふと見遣れば
連れのとぼけた顔のビーグルも
主人と同じ怪訝な目つきで
私を見上げて通り過ぎ
それから二度
犬は私を振り返った
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