面影橋/落合朱美
 

その昔
刑場へ向かう道程で咎人はこの橋の上に立ち
己の最期の姿を川面に映したと云う


インチキな占い師に
「貴女の前世は罪人でした」
と 言われて以来占いはやめた

この善良な私のどこが罪だというのだろう
憤って部屋を出る私の背に
彼女は玉のような声を投げかけた

「すべての命は罪を背負って生まれてきたのです」


人を殺したことはない(現世に於いて)
            恨んだことは ある
人を殴ったこともない(あくまでも現世で)
            罵倒したことは ある
盗んだこともない(記憶の限りでは)
            嫉んだこ
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