./当麻完二
 
拭う毛糸の糸が絡み合い
少しづつ動けなくなる

前のそれに届かずに
それを大切に思う

もう少しの糸をちぎる
足元に散らかった私の靴の中にそれが入る

玄関を開けると
部屋は真っ暗で
大切にしたそれを見失った

白い余白を塗りつぶすことで
そのことも忘れればいいと
父に言えば父は笑い
もうそこは
それ以上にないそれを
少しの糸が積もり
小さな山が
それを隠し
それは
それは
もう
見えない
それは
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