微熱/七尾きよし
どちらも大きいんだけども◇右目が左目よりやさしくて◇きみは小さな女の子を連れていた
脱ぎ捨てたTシャツをデパガなだけに◇手慣れた感じにやさしくたたんでくれた君
その大きな瞳で◇ぼくの目を覗き込んでは顔をひるがえし◇フフフッってきみは笑い
ベッドの上でタロットをならべ◇別れたほうがいいんじゃないと
言うぼくを不安気に見つめた
もうおばさんよとおなかを隠しながら逃げてく君を◇押し倒すぼくの唇をきみは素早く奪い
いつの間にか左目もやさしくなっていて◇覆っていたはずの◇影も今はもうなくなってしまっていた
やわらかくて、あたたかくて◇ママの匂いがするよ◇と言うぼくのうなじを君は撫で
愛してるよって言葉を一度も言ったことのない二人は◇きっと体温を超えることのない恋を続ける◇って思ってた
さようなら◇愛しい人
戻る 編 削 Point(2)