/麻草郁
 
十人の女神が世界を奪い、神は死んだ
私はもう狂っているのかもしれない
私の手は乾いているが
こころは少年のように軽く穏やかだ
この世界が私をひき止めて放さないのはその多様性にある
分裂症患者の脳が漏れて広がったようだ
君は笑うだろう、それが現実だと、君の口癖だ
私はおぼえているよ
何遍も繰り返された場面
人生の執行猶予期間は永遠
死んだ友人に語り続ける男、少年は砂糖細工の骸骨をにぎって走る、今日はパレードの最後の日、人力の観覧車、鏡の迷路、少年が転んだ、手のひらから骸骨が転がってもう少年の目には見えない、真っ暗な側溝に落ちた骸骨、白い欠片を撒き散らし、君は回転しながら宇宙の深淵に呑みこまれていく、真空に酸素の欠片を撒き散らし、白い骸骨、黒いひとつ目の眼窩に映る星々、少年は走る、野原を抜け
夢の中で君は少年のように見える

私の頬を泪がつたう
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