紅と雪うさぎ/銀猫
 
その指先に
凍れる紅をさし
頬の産毛を粟立たせ
きみは
街なかの雪に泳ぐ


手のひらで固めた結晶は
赤い目を探すうち
もはや雪でなく
氷の透明に変わっている


そんなにも雪を待ち
はしゃいでいるのは
何色の悲しみを忘れるためだろう


 南天の実
  ほろり

 針葉樹の黒
  ちくり


不意の言葉にたじろがぬよう
わたしは襟を
幾度か掻き合わせて
愛に似たものを逃すまいとする


灯油の匂いは儚くて
寒さばかりがきみに降り
銀のひと夜は更けてゆく


朝にはきっときみ
化粧を施して








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