べべ/和泉 誠
 

それを知ってたから
彼女は僕のために優しい嘘をついた

ただ側にいてあげればよかった
君をこの手で救おうだとか
一緒に幸せの国へ行こうだとか
そんなこと言わずに
ただいつまでも君の側にいてあげればよかった

運命の車輪は二人を引き離した
それがお互いのためであったのか
それとも悲劇好きな神の趣向か

べべ
君は今何をしてる?

まだ薄暗い部屋から抜け出すことができずに
いつまでも同じ所を彷徨っているんじゃないかい?
君はそれに不満一つもらさないだろうけれど
僕はとても心配だよ

もしも今、もう一度君に会う事ができたなら
そしたら僕はもう何も言わずに
ずっと君の側から離れないよ


戻る   Point(0)