この世界中の人にラブソングを/和泉 誠
この胸をときめかすもの
すべてを引き換えにしても手に入れたいもの
昔は詩人になりたかったけれど
詩人はかつて憧れたほど美しくはなかった
人間の臭いがする生き物だった
そうさ
この世界にあるもの全部人間の作ったもの
うまくやって人間の弱さや醜さを隠しても
消し去ることまではできない
楽園と呼ばれた場所もメッキがはがれてしまえば
薄汚い動物小屋
それが分かって
それを受け入れられて
初めて一人前
だったらそんなもの初めから夢見なければ
けれど
針路を変更するにはあまりに船を進めすぎた
それに
理想を追い求めるのがあながち間違いとも言えない
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