この世界中の人にラブソングを/和泉 誠
 
この胸をときめかすもの
すべてを引き換えにしても手に入れたいもの

昔は詩人になりたかったけれど
詩人はかつて憧れたほど美しくはなかった
人間の臭いがする生き物だった

そうさ
この世界にあるもの全部人間の作ったもの
うまくやって人間の弱さや醜さを隠しても
消し去ることまではできない

楽園と呼ばれた場所もメッキがはがれてしまえば
薄汚い動物小屋

それが分かって
それを受け入れられて
初めて一人前
だったらそんなもの初めから夢見なければ

けれど
針路を変更するにはあまりに船を進めすぎた

それに
理想を追い求めるのがあながち間違いとも言えない

[次のページ]
戻る   Point(1)