いくらなんでも歩きながらは・・・/大覚アキラ
 
打ちながらも、
  ぼんやりと前方を見て歩いていた。

  と。

  5メートルほど前方に、犬(?)のモノとおぼしきフンが、
  ドカーンと転がっているのに気がついた。
  このまま行くと、おそらく彼女は見事にそれを踏むだろう。
  だが、彼女は話に夢中で、
  そんなことに気付いている様子は皆無だ。
  かなり気を遣いながら、タイミングを見計らって立ち止まり、
  ようやく彼女にそのことを切り出した。

  「あのさ・・・」と、ぼく。
  「なに?」彼女は話の腰を折られて、やや不機嫌だ。
  「あの・・・ウンチが・・・」
  「えっ? したいの?」

  ちがーう!! なんでやねん・・・。

  「いや、そうじゃなくって・・・」
  「もしかして・・・出ちゃった・・・?」

  あのなぁ・・・おれは、いったいどんな生き物やねん。
  犬でも歩きながらはしないでしょう。おれは金魚か。
  つーか、アンタはどういう男と付き合ってるつもりなのだ。


はたして、あの頃のぼくは、彼女に人間として認められていたのでしょうか?
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