歌/和泉 誠
 
歌は流れるもの
一度はその耳に入るが
そのままスルスルと抜けていくもの
手で耳をふさいでも歌はスルスルと

だから私たちは何度も唄う
何度も歌を聴きたいがために

もしも歌が硬くて大きな塊で
一度耳に入ってしまうと
ずっと抜けていかないものなら
私たちは歌にこんな憧れを抱かないだろう

もしも歌が目に見えるもので
ちらりと辺りを見回すと
簡単に見つけられるものなら
私たちは歌をこんなにいつまでも唄おうとしないだろう

もしも歌が手に取れるもので
ちょっと手を伸ばすと
たくさん掴めてしまうものなら
私たちは歌をこんな価値のあるものだと考えないだろう

歌なんて形の分からないもの
歌なんて誰にも掴めないもの

夢を見て夢を見せてくれる魔法
ねぇ、あなたは一体どんな歌を唄ってくれるの?
戻る   Point(0)