林檎を見ています/ふるる
小さな宝石のように、かわいらしく、愛しかったのですが。
林檎を見ています。
一つの光を内蔵した林檎、それは描かれます。
林檎の内面である黄色、白に近い黄色が画面いっぱいに塗りたくられ。林檎を覆う紅色は転々とまるで血痕のように散らばっています。画面の真ん中にはナイフが。切られた林檎はどうなるのでしょうか。冷たくなってしまうのでしょうか。美しい人の唇に、舌に、乗せられ、暖められると良いのですが。
その絵画は非常に巨大なので、誰もその全貌を見ることができません。
空高く飛ぶカモメ、それだけがこの絵画を見ることができるのですが・・・・。
興味はないようです。
林檎を見ています。
一つの記憶としての林檎、それは書かれます。
「声」
ある日
誰かに呼ばれ
振り向くと
林檎があった
初めてキスした日に
雨が降っていて
かすかに呼ぶ声が・・・
林檎を見ています。
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