林檎を見ています/ふるる
 
林檎を見ています。

一つの瑞々しさをはらんだ林檎、それは歌います。
その歌は軽快なリズムでもって林檎の命、林檎がかつて実っていた木、沢山の仲間たち、
花であった時代、訪れた虫たち、そのきらめく羽音、触れられるくすぐったさ、太陽の金色のシャワー、月の銀の雫、雨が優しいリズムを教え、風は気まぐれに過ぎていって・・・
そういったものを歌い上げます。
声は小さく、か細いけれど澄んでいて・・・・。
雨が降っているのに、遠くまで見通せるような。


林檎を見ています。

一つの難しくない書物としての林檎、それは演じます。
舞台はテーブルの上で、照明は小さな電灯、林檎は紅の衣を着て。
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